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埋蔵文化財:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077723031.html

今回は、裁判と不動産価格の話です。


◎事件の概要
所有する土地が学校用地として1976年に買収され、公社から代替地として提供された土地がありました。

しかし、この土地は埋蔵文化財の包蔵地であり、文化庁の許可がなければ建築確認がおりないことがわかりました。そこで、公社に対して損害賠償を請求しました。
(東京地判昭57.1.21)


◎判決
埋蔵文化財の存在は瑕疵にあたり、調査費用相当の支払が命じられました。


◎解説
埋蔵文化財は、1950年に制定された文化財保護法に規定されています。土地の所有者等は、その自治体の教育委員会事務局等の窓口で、周知の包蔵地の有無を確認します。

包蔵地に含まれている場合には、試掘をしなければなりません。また、試掘したところ以外から遺跡等が発見された場合には、工事は中止しなければなりません。試掘費用や工事の中止による使用制限といった負担は、その土地を開発する者が負うことになります。

この事件の土地については、代替地を提供した公社は「文化庁の全国遺跡地図が出版されたのは1976年5月で、その土地の売買契約を結んだ当時は周知の埋蔵文化財包蔵地になっていなかったため、調査発掘費用を負担すべき法的根拠はない」と主張しました。

しかし、裁判所は「本件土地が文化財包蔵地として周知であったか否かに関わりなく、本件土地には隠れたる瑕疵がある」と判示しました。


◎不動産鑑定の見地から
さて、試掘は1立方メートル(縦・横・深さ各1m)程度を小型のパワーショベルを使用して行い、文化財の有無は自治体の担当者が判定します。その費用は、20~30万円でしょう。もちろん、自治体によって異なります。

20万円/㎡で100㎡の土地を想定すると、その価格は2,000万円です。減価率は、1~2%となります。

ただし、これは試掘の場合だけです。文化財があることがわかると、本調査が必要となります。

小田原北条氏の城下町であった神奈川県小田原市では、ある企業が建物を建てる際に試掘したところ、文化財が発見されました。その結果、着工が5年程度先延ばしになったそうです。この場合は、その5年間に獲得できなかった収益の現在価値だけ減価が生じたことになります。

文化庁のURLを貼り付けておきます。ご参考になさってください。

http://www.bunka.go.jp/bunkazai/shoukai/maizou.html