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暴力団事務所近くの土地:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077713179.html

購入した不動産のすぐ近くに暴力団事務所があったとしたら、いい気分にはなれません。こんな判決がありました。

◎事件の概要
買主は、事務所兼賃貸マンションを建築する目的で、1992(平成4)年3月に土地(66㎡)を9,100万円で買いました。売主及び買主とも不動産業者です。

ところが、その土地が面する交差点の反対側に暴力団事務所がありました。売主はこの点について何も告げず、また宅地建物取引業者が不動産の売買の契約に先立って作成する重要事項説明書にも該当の記載はありませんでした。

買主は、売主に対して損害賠償の請求をおこないました。(東京地判平7,8.29)

◎判決の概要
売主に対して、損害賠償金(1,820万円)の支払を命じました。

裁判所は、対暴力団事務所について、「宅地として通常保有すべき品質、性能を欠いている」としました。そして、「暴力団事務所の存在は本件土地の瑕疵にあたり、かつ、そのような外観を何ら呈していなかったから、隠れたる瑕疵に該当する」としました。つまり、売主の瑕疵担保責任を認めたわけです。

◎不動産鑑定の見地から
注目すべきは、損害賠償金の額で、上記のとおり1,820万円です。これは、売買代金の20%相当額です。

この暴力団事務所は、一種の嫌悪施設としてとらえることができます。変電所・廃棄物処理場・公害発生施設等についても、ほぼ同様の快適性の阻害要因でしょう。

近隣地域の至近距離に存在する暴力団事務所と廃棄物処理場等とは、もちろん同一視できるものではありません。しかし、快適性を重視する住宅地にあっては、この20%の減価率はひとつの参考になるのではないでしょうか。

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)によって、暴力団員の数は減少し、暴力団事務所の撤去も進み、また、活動状況も停滞している模様です。

しかしながら、同法により暴力団の活動が法律に触れぬように巧妙になり、一般企業社会への進出(企業舎弟の増加)や組織擬装が増加するなど、組織の不透明化・マフィア化が進んだといわれます。

知らず知らずのうちに、暴力団の関係先に至近の不動産を購入しているという事態が生じているのかもしれません。