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鬼門の方向に便所がつくられていた:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ
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◆―――――――――――― 今回のテーマ ――――――――――――――◆
「鬼門」?何ですかそれ?という声が聞こえてきそうではあります。40年以
上前の判決にこのようなものがありました。
◎事件の概要
建築業者が住宅の新築工事を請け負って、これを完成させました。
しかし、引渡しが無事に終わったにもかかわらず、注文主が代金を支払いませ
ん。
建築業者が代金を支払うように請求したところ、「鬼門」の方向に便所を作ら
れたのが不満だと注文主が主張し、注文主はこの建築業者に損害賠償を求めま
した。
(名古屋地判昭54.6.22)
◎判決
便所が鬼門の方向にあることは、目的物の瑕疵に該当するため、注文主の精神
上の損害を20万円として建築業者に137万円の支払いを命じました。
◎解説
裁判所で「鬼門」について争われた数少ない事件です。
この便所は、建築業者も鬼門の方向に作ることを避けるつもりでいました。と
ころが、磁石の狂いから方位を見誤りました。
注文者は、入居後に心理的な圧迫感があり、心の安らぐ気持ちにはなれないと
主張しました。
裁判所は、「わが国の家屋の建設においては、習俗的な嫌忌として、鬼門の問
題がある」として、この建物が建築された当時でもこれを気にする人がいるこ
とを指摘しました。
そして、「その意識は希薄になっている」として、多数の人はその当時では気
づかっていないことを示しました。しかし、「未だ心理的な圧迫感と建築関係
業者の避止すべきものとの認識がある」と判示しました。
よって、「便所が鬼門の方角にあることは、特段の事情がない限り、目的物の
瑕疵に該当する」としました。
◎不動産鑑定の見地から
磁石の狂いは現在ではほとんど起きないでしょう。ウェブで地図を見たり、方
位を調べたりすることも簡単にできます。
また、鬼門を気にする人はほとんどいないように思われます。ただ、現在では
「風水」がそれにあたりますか。それでも、気に掛ける人は一部にとどまるで
しょう。
どちらにしても、現在で問題になることはほとんどなさそうです。時代を感じ
させる判決ですので、取り上げてみました。
■編集後記■━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………
「鬼門」で思い出しました。アニメの「サザエさん」です。
家を建て替えることになって、マスオが間取りを考えました。確かフネが「マ
スオさんは若いから鬼門を気にしないんですね」と言いったところ、マスオが
怪訝な表情になったという場面です。
アニメ「サザエさん」の放送が始まったのは1969年で、マスオは28歳と
いう設定です。そうすると1941年生まれ。
上記の判決のときは、マスオは38歳ということになります。今年2025年
は84歳。
なるほど、その世代の人たちでも「その意識は希薄になって」いたのですね。