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他人の土地を通る権利 囲繞地通行権:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ
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◆―――――――――――― 今回のテーマ ――――――――――――――◆
私たちは、日々道路を利用しています。その道路は、設置や維持管理という点
に着目すると、大きく二つに分けることができます。
公的な主体が設置し維持管理している道路=公道と、私人が設置し維持管理し
ている道路=私道です。
この私道には、建築基準法の適用を受ける道もあれば、適用を受けない道すな
わち敷地内通路もあります。今回からは、敷地内通路の通行権と増減価要因に
ついて考えてみます。
囲繞地(いにょうち)通行権という権利があります。他の土地に囲まれて公道
に面していない土地すなわち袋地の所有者が、その土地を囲んでいる他の土地
すなわち囲繞地を通行できる権利のことです。民法第210条に規定されてい
ます。「公道に至るための他の土地の通行権」ともいわれます。
公道に面している土地Aがあるとします。aが所有しています。土地Aの公道
と反対側を分筆して、土地A1が登記されたとします。この時点では、土地A
もA1もaが所有したままです。
このように、土地A・A1をaが所有したままならば、土地Aには土地A1の
囲繞地通行権は発生しません。土地A1の価格は、土地A・A1を一体とした
場合の価格の一部になります。
┌──────┐
│ │
│ 土地A1│
│ a所有 │
│ │
├──────┤
│ │
│ 土地A │
│ a所有 │
│ │
└──────┘
公道
ところが、土地A1をaがbに売却すると、土地Aについて土地A1の囲繞地
通行権が発生します。
┌──────┐
│ │
│ 土地A1│
│ b所有 │
│ │
├─┬────┤
│ │ │
囲繞地通行権→ │ │土地A │
│ │a所有 │
│ │ │
└─┴────┘
公道
土地A1の上に建物を建てるためには、建築基準法の道路に2m以上接してい
なければなりません。ところが囲繞地通行権が2mの幅で認められとは限りま
せん。
認められなければ建物を建てることはできませんから、A1の価格は大幅に下
落します。
他方、土地Aには土地A1の囲繞地通行権が認められますから、土地Aの価格
はそれだけ下落することになります。
鑑定評価の実務では、土地の背後に袋地がある場合には囲繞地通行権が存在す
るか否かに留意しなければなりません。
■編集後記■━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………
「命あっての物種」ということわざがあります。ところが、「物種」を「モノ
ダネではなく、「ものだねえ」と間違って覚えている人がいるそうです。
大手術をして命を取り留めたところ、「ことわざにもあるよ、命あってのもの
だねえって」と言ったとか。
本気で「物種」を「ものだねえ」と思い込んでいたようです。
そりゃ、命拾いしたのですから気はわかりますが、ちょっとねえ。