違法建築物の売買と契約解除:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ|新着情報

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違法建築物の売買と契約解除:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

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◆―――――――――――― 今回のテーマ ――――――――――――――◆


建蔽率違反は、よくある違反ではあります。

◎事件の概要
1963年2月にXは不動産業者Yから土地付建物を買いました。

手付金を支払って契約を締結した後にXが調べてみたところ、その建物は建蔽
率に違反した建物であることがわかりました。

指定建蔽率は30%であるのにもかかわらず、実際は70%もの建蔽率を消化
している違法建築物だったため、Xは契約の解除と手付金の倍返しを請求しま
した。
(東京地判昭39.12.12)

◎判決
契約の解除を認めましたが、手付金の倍返しではなく手付金の返還のみを認め
ました。

◎解説
1963年当時は、第2種空地地区という指定がありました。建蔽率が30%
に指定されているものです。

ところが、この事件の建物の実際の建蔽率は70%でした。裁判所は、「違法
建築物は、遠からず除却、移転、改築等の措置を免れない運命にある」としま
した。

また、「生活の平穏がはなはだしく乱されることになる」として、これを隠れ
た瑕疵にあたるとして契約の解除を認めました。

生活の平穏が乱されることについては、このような違法建築物についての担当
機関の調査、呼び出し、それに伴う折衝その他が生活の快適性を阻害すること
を指摘しています。

外観からは、違法建築物であることはなかなか判定ができません。建蔽率違反
は違法建築物の中でも多いようです。通常は数%程度の違反でしょうが、本件
のような2倍以上の違反は当然に問題となります。

損害賠償金については、裁判所は「手付金倍返しが認められるのは、債務不履
行を理由とする解除の場合のみに限られる」として、手付金のみの返還を認め
ました。

違反建築物については、このほかにも様々な判決例があります。不法行為責任
を認めたものや、宅地建物取引業法に抵触したため懲役刑を課したものもあり
ます。

◎不動産鑑定の見地から
違法建築物であるか否かを確認することは、不動産鑑定でも基本的な事項です。
不動産鑑定における最有効使用は、合理的かつ合法的な最高最善の使用ですか
ら、当然のことです。


■編集後記■━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


高市首相は自民党総裁に就任したときに、「馬車馬のように働いていただきま
す」とか、「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、
働いて、働いて、働いて、働いて参ります」とか、発言しました。

国のトップがそれでは過労死を誘発するのではないか、と懸念を示す人たちが
いました。当然だと思います。

ただ、私は軍歌「月月火水木金金」を思い起こしました。無我夢中で働くこと
を礼賛する歌です。

でも、結局日本は負けたのですね。対するアメリカ軍は、きっちりと休みをと
っていたそうです。そして、休みの前日はアメリカ兵は張り切って働いたそう
です。

いや、張り切って働いて人を殺すのは歓迎できませんよ。でも、高市首相のこ
の発言は、劣勢の日本軍の中隊長がヤケクソになっているように思えてなりま
せん。