コモンズと不動産に関する法律
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ずいぶん昔のJR東日本のCMに、横須賀線北鎌倉駅の現在の風景と小津安二
郎映画のシーンとを比べて、全く変わっていないことを映すものがありました。
変わっていないことには理由があります。コモンズという概念です。
コモンズとは社会における共有資源のことです。元々は牧草地や水源のように、
誰かが独占するのではなく、人々が関係を結びながら使い守っていく共有地を
意味する言葉です。このコモンズに、不動産に関する法律が関わっています。
神奈川県鎌倉市の山は、コモンズを象徴するものです。鎌倉市の森林のほとん
どは、森林法をもとに県が定める「地域森林計画対象民有林」となっています。
これは、将来にわたって、森林として保全し扱っていくと決めたものです。林
地所有者であっても、勝手に開発や転用を行なってはいけません。私有地・私
有林であっても、「私物化」はできないのです。
加えて、鎌倉はナショナル・トラスト運動の発祥の土地でもあります。
鶴岡八幡宮の裏手の山には、高度経済成長期には宅地開発の計画があったそう
です。現代に例えるならば、、明治神宮外苑の木を伐採して高層ビルを建てる
ようなものです。
しかし、鎌倉文士である大佛次郎をはじめとする文化人や市民が森の保存運動
を始め、該当する山林と上地を買い取りました。
さらに、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(古都保存法)が
成立し、乱開発に歯止めがかかることになりました。いくつかの緑地には特別
緑地保全地区制度が導入されています。私たちが美しいと感じる森林の風景は、
何重にも張り巡らされた制度によって守られています。
コモンズについて思い浮かぶのが経済学者の宇沢弘文氏が提唱した「社会的共
通資本」という概念です。
それは、「すべての人びとがゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、
人間的に魅力ある社会的に維持することを可能にする、自然環境と社会的装置」
と定義されています。
自然環境を例にとると、かつて水俣湾はそこに暮らす人にとって、共通の財産
でした。漁業、そして食糧の要である海を汚染しないよう厳しく管理し、皆で
大事にしてきた場所でした。
その海にチッソは廃液を流しました。社会的共通資本としての水俣湾を、チッ
ソが収奪し破壊したのです。それは、取り返しのつかない汚染をもたらし、人
々の生活と尊厳を奪いました。
上記の神宮外苑の開発は社会的共通資本を壊すものです。また、病院を減らそ
うとする動きありますが、これは医療という社会的共通資本を破壊するものだ
と私は考えます。
■編集後記■━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………
このようなことを書きましたが、不動産鑑定はこれに対応できるかというと、
心許ない限りです。
社会的共通資本の価値を測ろうとすると、外部経済の問題に直面します。例え
ば林地の価格を求めることはできますが、それは木材を生み出す能力について
の評価です。
しかし、林地の価値はそれだけにとどまりません。
空気を浄化する、雨水を貯蔵する、景観によって人の目を楽しませる等々の価
値は林地の価格には含まれません。
このような問題に向き合うと、不動産鑑定が対応できる範囲は非常に狭いもの
だと感じざるを得ません。