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地方公共団体の条例:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12209179233.html

今回は、裁判と不動産価格の話です。

◎事件の概要
Xは、不動産業者の媒介によって377.41㎡の土地を6億2,810万円で購入し、1990年に引き渡しを受けました。不動産業者は、その契約に先だって、その土地の容積率は150%であると重要事項の説明を行いました。

ところが、東京都建築安全条例10条の3については説明しませんでした。この条文によれば、容積率が133%に制限されることが後日わかりました。

そこで、Xはこの媒介をした不動産業者に対して7,000万円の損害賠償を請求しました。しかし、業者はXが建築の目的物を伝えていなかったのでこの説明をしなかったとして、争いになりました。
(東京地判決平8.8.30)

◎判決
業者の説明義務はあるが、損害は認められないとしました。

◎解説
都建築安全条例10条の3は、マンション等の特殊建築物の接道義務を定めています。床面積が500㎡未満は4m、500㎡~1,000㎡は6m以上の幅で、道路に接しなければなりません。本件は、これによって容積率が133%に制限されることとなります。

裁判所は、「マンション建設予定を媒介の業者に伝えていなかったとしても、本件土地の立地条件や床面積等に照らせば、マンション等の建設は十分に予測可能であった」として、「都安全条例10条の3の説明義務がある」としました。

しかし、引き渡しの当時は具体的な計画がなく、容積率についてはさほどの関心がなかったことや、当該条例の条文のただし書きの適用の可能性もあることから、この説明義務に違反したことによってXが損害を被ったことは認められないとして、Xの請求を退けました。

1990年当時はバブル期でした。当時は、とにかく土地さえあればどんな土地でも売れ、また買い手がありました。土地に潜在する瑕疵についても、すべて値上がりが帳消しにしてくれた時代でした。

◎不動産鑑定の見地から
建築基準法は、建築についての最低限度を定めた法律です。したがって、地方公共団体は法律よりも厳しい条件の条例を定めることができます。

不動産鑑定においては、合理的かつ合法的な最高最善の使用である最有効使用を前提として、価格を求めます。このような条例の規定を見逃したら、アウトです。

東京都建築安全条例は、下記のURLからご覧ください。

http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1011306001.html